”乗り物は単なる移動手段”と割り切っている人にとって、長距離国際線飛行機や長距離の電車での旅は辛いものに感じる事でしょう。それが深夜のフライトや夜行列車だったとしたら…苦痛でしかないかもしれません。
では、夜の長距離フライトと夜行列車、はたしてどちらが辛く、どちらが快適なのでしょうか?個人的には飛行機の方がましだったと感じました。その理由は①乗り物で寝られるか②旅の行程が単調かそれとも変化に富んでいるか、の違いでした。
夜行列車と国際線の長距離フライト 寝られるのはどっち?
長年鉄道マニアをやっていますと、寝台列車や夜行列車への乗車経験もそこそこの回数になります。寝台列車は慣れると寝れます。ですが、ムーンライトながらは寝れません。理由は様々なんですが、それを長距離フライトと比較してみると面白いかと思いました。
列車はご存知ムーンライトながら。電車です。フライトに関しては最近利用したタイ航空TG944便(タイ・バンコクのスワンナプーム国際空港(BKK)からイタリア・ローマのフィウミチーノ空港(FCO))という深夜から早朝にかけてのフライトを元に考えます。
なお、比較とは言ってもあくまで主観での感覚、個人の感想です。
比較情報
対象となる列車と便
ムーンライトながら
- 時刻:大垣(22:48)発→東京(5:05)着
- 所要時間:6時間17分
タイ航空TG944便
- タイ・バンコク(0:20)→ローマ・フィウミチーノ(現地時間6:50)
- 所要時間:11時間30分
座席の違いは?
ムーンライトながら(JR東海185系)
2019年夏現在ではJR東日本の185系(特急踊り子に使用されていた車両)が使われています。ムーンライトながらの運用にはこれまでも長らく特急型車両が用いられてきました。かつては183・189系や373系などがあてられていたことがあります。
シートピッチも飛行機に比べれば広いですし、座り心地も悪くはありません。腐っても特急車両ですからね。
タイ航空TG944便(Airbus A350-900)
自分たちが利用した時の機材はAirbus A350-900でした。比較的新しい機体ではありますが、シートピッチ・座席幅ともに電車に比べると狭いです。特筆すべき点としてフットレスト・ヘッドレストがあります。
機能の比較
JR東海 185系 | Airbus A350-900 | |
---|---|---|
シートピッチ | 約910mm | 約810mm |
座席幅 | 約475mm | 約457mm |
フットレスト | なし | あり |
ヘッドレスト | なし(出っ張りあり) | あり(角度調整が可能) |
配置 | 2×2 | 3×3×3 |
※数値はおおよその値で代表的なものをあてています。編成によって若干の差があります。
座席の幅だけを見てみると列車の方が優れているように見えますが、実際にはA350-900の方が快適でした。理由はヘッドレスト、フットレストがある事。特にフットレストがあるおかげで足を延ばし切り宙に浮かせたるようなポジションを取る事が出来たためかなり快適でした。
少し見づらいですが、エアバスA350-900にはフットレストがあります。
下の画像はA350-900のヘッドレストです。手で折り曲げ調節します。これ、自分で調節できることに気づいていない人が多いかもしれません。
電車の場合はそのような機能がありません。常に座った姿勢を強いられます。いわゆるエコノミー症候群が心配な状態になるわけです。(185系の場合、ヘッドレストのような出っ張りは有ります。ただし無いよりはマシな程度ですのでネックピローを持参した方が無難でしょう。)
配置の違いは関係するか?
ムーンライトながら(185系)
ご存知2列×2列配列となります。季節列車化したムーンライトながらの乗車率はかなり高いため窓側を選ぶかそれとも通路側を選ぶかでかなり快適さ違ってきます。
乗車時間は6時間程度です。席に着く前にトイレに行っておき後はひたすら寝るのであれば窓側でよいでしょう。しかし、途中でトイレに行きたい人は通路側を選んだ方が無難。ただし、寝ている時に隣の人に起こされる可能性もあるので要注意。友達同士や家族と一緒なら気兼ねする事もなく良いかも。
A350-900
3列×3列×3列の配置。どこに席を取るかは何を優先させるかによって変わってきます。トイレに行きやすく、隣の人がトイレに行くときに起こされにくいのは中央ブロックの通路側でしょう。僕はこの席を取り大正解でした。もし搭乗率が低く3列せしめる事が出来るようであればなお儲けものです。
騒音はどうか?
電車にしろ飛行機にしろ、揺れる時は揺れますし、うるさい環境である事には変わりありません。ですが、いくつか傾向があります。
列車(ムーンライトながら)
- 小刻みな揺れが常にあるためそのたびにうるさい
- モーター車(クモハとかモハの車両)の場合、常にうるさい
- 先頭車両の場合、警笛音が響く
- デッキに近い位置だと人の出入りや戸の開け閉めの騒音がある
- 歩く時の床のコツコツ音がある
- ポイント上の通過時、停車した電車が発車する時のショック時の騒音
- 夜行列車特有の雰囲気で興奮して眠れない人が友達とおしゃべりを始める事が多々ある
- ポテチとか食べられた暁には、ガサゴソ音で大変
飛行機(A350-900)
- ジェットエンジンの騒音が常にある(他の機種よりは静か)
- トイレ付近だと戸の開閉や人が並んだりすると音が気になるかも
- カーペット敷きなので歩く時のコツコツ音は気にならない
- 機内エンタメがあるため、皆さんだいたいヘッドフォンをしてディスプレーを見ているか、寝てるかのどちらかなのでしゃべり声に悩まされる事は少ない(たまたまそういう路線だったのかも)
騒音に関して言えば圧倒的に電車が不利ですね。特に「ガッチャン」系の音が響き渡る事があるため慣れないと寝にくいです。一方の飛行機の場合は、頭に突き刺さるような騒音を感じる機会が少ないように思います。飛行機のエンジン音は常に鳴り響いているので”こういうものだ”と割り切って考えるようにすればすぐになれますし、耳栓をすればだいぶ楽になります。
揺れはどうか?
常にゆられている列車か、たまに大揺れする飛行機か。
列車(ムーンライトながら)
- 小刻みな揺れが常にある
- 時々左右に揺さぶられるような揺れを感じる(ポイント通過時)
- 発車時のショック(定期的に駅に停車するので)
- モーター車の場合、常に振動が伝わってくる
- デッキに近い位置だと人の出入りや戸の開け閉めで揺れを感じるかも
飛行機(A350-900)
- 基本飛び立ってしまえば大きな揺れはそれほどない
- ただし乱気流を通過する際は横揺れに加え縦揺れがある
- 激しい揺れの場合、さながらアトラクション並みの揺れとなる
- ジェットエンジンなので細かな振動は常にあるともいえる
- エアバスA350-900の場合、他の飛行機と比べて静かな方だった
電車は常に揺れている感覚、文字通りガタンゴトンという感じです。リズム感が心地よいと感じる人もいるかもしれませんが気になる方は気になるかも。
飛行機は乱気流さえ襲ってこなければ揺れで起こされるという事はないと思います。
就寝時の環境(電灯の明るさ・空調の具合)はどうか?
列車(ムーンライトながら)
- ムーンライトながらの場合、電灯は付きっぱなし
- 季節にもよるが、エアコンの吹き出し口にあたると夏でも寒い
飛行機(深夜便)
- 最初の機内食サービスが終わると翌朝まで減灯される
- 空気が乾燥し、寒い。夏でも羽織るものとマスクがあると良い
結局、寝られる方はどっちか?
まとめますと次のような感じになるかと思います。
- 座席などのハード面では列車の方が優る部分がある
- 眠るための機能はA350-900の方が充実している
- 揺れや騒音などの点では飛行機が優る
- 座席指定に関わる部分は好みの席が取れるかどうか?次第
- 明るさや周りの人たちの騒がしさに関しては飛行機の方がまし
- 寒さ対策はどちらも必要
列車と飛行機、一長一短ですね。個人的には飛行機の方が眠れました。
夜行列車と長距離飛行機 楽に移動できるのは果たしてどちらか?
前項では”寝られるかどうか?”に絞っていますが、さらに”楽に移動できる方はどっちか?”考えたいと思います。
楽に過ごすための要素とは?
- 常に座りっぱなしになるかどうか
- 快適に過ごす手段があるかどうか
座りっぱなし?
恐らく長時間の旅程で一番つらいのは”座りっぱなしだ”という事でしょう。この点はどうでしょうか。
列車(ムーンライトながら)
- 座席で立ち上がる事は容易
- 荷物も取りやすい
- 狭い車内なので圧迫感があるかも
- 通路は中央のみ。歩き回るのにも限度がある
- デッキなどで軽い運動が出来る
- デッキで時間を過ごしても迷惑にはならない
飛行機(A350-900)
- 座席で立ち上がる事は比較的難しい
- 機種にもよるが国際線の大型機の場合機体幅が広く圧迫感は少ない
- ギャレーや非常口付近で軽く運動する事は可能
- 通路は狭くすれ違いには気を遣う
- 通路が二本有る場合、混雑を避けて歩けるかも
快適に過ごす手段はあるか?
列車(ムーンライトながら)
- エンターテイメントの類なし
- アテンダントによるサービスなし
- 飲み物・食べ物は基本持ち込みのみ
- トイレはどちらかの端に1ヵ所はある(ただし車両をまたぐ場合もあり)
飛行機(A350-900)
- エコノミー席でも座席背面にモニターがありエンターテイメントプログラムが楽しめる
- キャビンアテンダントによるドリンクサービスや機内食、その他サービスを受けられる
- トイレはエコノミークラスの場合、中央付近と後ろあわせて4~5か所
率直に言って行程を楽しめるか?
同じことがひたすら続くと単調になり、たとえ短い時間でもその行程を楽しめません。逆に、適度に緩急をつけた各種イベントが巡ってくるとたとえトータル時間が長くても楽しめると思います。
ムーンライトながらの行程は楽しめるか
- 夜行列車に乗るというわくわく感がある
- 大垣駅に車両が入線してきて出発するまでの時間が非常に短く出発前の余韻に浸れない
- 電車が出てしまえば出来る事と言えば寝る事くらいしかない
- 夜行なので車窓は楽しめない
- 基本寝るための座席ではないので眠りづらい
鉄道ファンのみならず、大抵の人にとって夜行列車に乗る際はわくわくする物。ゆえに寝れない事もありますが、あのわくわく感、駅につき電車の入線を待ち、出発するまでがピークのように感じます。後はひたすら寝るだけ。例えると、ムーンライトながらでの旅は6時間×1本の行程とも言えます。
長距離飛行機の行程を分析してみる~変化に富んだイベント
単調になりがちな夜行列車とは違い、国際線長距離飛行機の場合その行程には色々な要素が混じっています。順番に上げてみましょう。
- チェックイン~保安検査~搭乗前の免税店でのショッピング
- 搭乗~プッシュバック~タキシング中の安全ビデオとアナウンス
- テイクオフ~上昇~ベルト着用サインの消灯
- 安定飛行後のウェルカムドリンク
- 最初の機内食
- 自由時間(笑)エンタメもよし
- 消灯~就寝
- 翌朝2度目の機内食(朝食)
- 着陸に向けた下降開始と旋回~ランディング
- 着陸~降機
このように、11時間以上の行程ではあるものの各種イベントが細切れに訪れる感覚です。ゆえに、ムーンライトながらでは6時間×1本の感覚でしたが、飛行機の場合は30分~2時間×5,6本という感覚になります。
結論 機体の種類にもよるが飛行機での行程の方が楽しく、楽に移動出来ると感じた
正直なところ11時間オーバーの飛行機よりも6時間強のムーンライトながらの方が苦痛に感じました。これは乗り物に乗る行程の違いによる物と思います。適度に様々なイベントが訪れる深夜の国際便フライトは変化に富んでいて楽しいものでした。
加えて今回利用した機材がエアバスA350-900だったというのも楽に感じた大きな要因だったと思います。特にフットレストとヘッドレストの存在は大きかったですね。途中乱気流でグワングワン揺れましたが逆にゆりかごのように感じて夫婦して爆睡しました。ちなみに一緒に行った友達はその揺れでダウン…。
JALもエアバスA350-900を導入し、今後順次置き換えして行くそうですので環境はより良い方向へ向いていきそうです。
鉄道マニアとしては厳しい結果となりましたが本来比べられるものではないので致し方ないかと。なんとも無駄ともいえる比較をしましたが、改めてそれぞれの良さを分析でき、なかなか興味深かったと個人的には感じています。(自己満足ともいえる…)
※あくまで個人の感想です。
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